ニジイロクワガタの発色原理について、黄色と金色の違いから考えた雑記
先日飼い始めた綺麗なニジイロクワガタを見ていて、ふとこの美しい色はどういう原理で発色されているのか気になりました。
メタリックな緑色が特徴です。
なぜこんなにきれいなのか、普通の緑とこのピカピカの緑は何が違うのか。
そんなことを考えながら発色の仕組みについてダラダラ書いてみたのがこの雑記です。
*実物には赤や黄色も混じっていますがここではニジイロクワガタ=ピカピカ緑とします。
人間は、光の波長が変わると色が変わったように認識します。波長の変化により認識できる色は以下の通りです。
例えば、紫色の光の波長は約380nm、赤色の光の波長は約780nmです。
さて、光の波長変化により現れる色はこれがすべてなのですが、この中に白色や黒色はありません。
白色とは
これらの波長(色)が異なる光すべてが均等に混ざった光が白色です。
日光は代表的な白色光です。太陽の色は白です。
ちなみに実際には、無限に近い数ある全て色を混合させなくても、代表的な色だけ混ぜれば、人間は白色と認識します。
黒色とは
白色とは逆に、どの光も含まれていないと黒と認識します。だから夜は暗いのです。
どれかではなくすべてが同時に起きますが、割合は違います。鏡は反射成分が多い、ガラスは透過成分が多い、などです。
エネルギーは保存されるので、反射成分が多いほど、吸収や透過成分は少ないということになります。
この前提に立つと、なぜ物体に色があるのかがわかってきます。
白色光が物体に入射すると、物性によって色ごとに反射、吸収、透過の仕方が異なります。
例えばレモンの場合だと、黄色の光は強く反射されて、他の光はあまり反射されず吸収されます。
これはレモンの皮を構成する物質の分子レベルの特性です。
人間の目は反射された光を捉えるので、レモンが黄色に見えます。
これで、少なくとも図1の中に存在する色が見える原理は説明できます。
全波長の光が含まれた白色光の中から、特定の波長の光が強く反射された時に、その波長に対応する色を人間は認識するのです。
では、ニジイロクワガタの色もこれと同じ原理で説明できるかというと、答えはNo.です。
図1にあのようなメタリックな色が含まれていないためです。
この疑問を考えるにあたり、同様の問題として金色の原理を考えます。
結論として、金色を特徴付けるキーワードは反射の強さです。
金に白色光が当たった時の反射光のイメージを図示します。
図2のレモンとの違いは、レモンよりも黄色の光を強く反射するという点です。
どうやら人間の目は、反射光が強い物体に対して光沢というものを感じるようです。
つまり、レモンと金は、他色の光よりも多く黄色の光を反射するという点では全く同じです。
色を波長のみで定義するとしたら、どちらも黄色と言えます。
しかしながら金はレモンよりもその反射率が高いので、同じ波長の光でも黄色ではなく金色に見えるのです。
黄色+光沢=金色、という考え方ができます。
同様に、赤茶色+光沢=銅色と言えますし、全色の光(白色光)を反射する物体は、白色+光沢=銀色となります。
同様に考えると、ニジイロクワガタの色も説明できます。
更に、その反射率が高いことから人間は光沢を感じ、ピカピカ緑になります。
ニジイロクワガタの色=緑色+光沢
結論は出たのですが…ここからは何故ニジイロクワガタは光沢を持つことができるのかについても少し触れます。
分子レベルの性質なので、金属元素以外の物質では金属光沢を持てません。
当然ニジイロクワガタの羽は金属でできていません。
その代わり、構造色という全く違った原理で金属光沢に近い光沢を発しています。
構造色とは透明な薄膜を重ねることで光を干渉させて発色する仕組みです。
光の干渉とは、複数の光が混ざったときに、特定の波長(色)の光が強まったり弱まったりする現象です。
干渉のイメージ図は下図の通り。
この図において「反射」と「反射①」の光が混ざります。
この時お互いに干渉し、特定の色の光が強め合い、その他の光は弱め合います。
どの色の光が強まるかは膜①の厚みで決まります。
ニジイロクワガタ場合は緑色の光が強まる厚みになっているものと考えられます。
ところでこの説明だと緑色に見える理由にはなっても、光沢が見える理由にはなりません。
ちょっと推測ですが、薄膜を何層にも重ねると、各層で少しずつ反射することで最終的に反射率が100%に近くなり、光沢が発生するのだと考えます。
ニジイロクワガタの羽は膜①、膜②、膜③…と等しい間隔、等しい厚みで何層にも重なっているのではないかと。
この構造により、ニジイロクワガタの羽は緑色で且つ金属のような光沢を得ていることがわかりました。
その目的、メリットについてです。
体温上昇を防ぐ説
前述の通り、物体に当たった光は反射、吸収、透過します。
吸収された光は、そのまま無になるわけではなく、大抵は熱に変換されます。
また、反射が多いということは吸収は少ないということです。
つまり、反射が多い→吸収が少ない→体温上昇が少ない、という理屈です。
天敵に気付かれないため説
彼らが生息する環境でこの色は天敵に見つけられにくいという説があります。
これについては、何が天敵で、天敵の視覚がどんなものかを調べると、もっと説得力を持って説明できそうですが、そこまでしていません。
よって、はいそうですか気付かれにくいんですね、と納得するしかありません。
もしかしてニジイロクワガタって昼行性?と思って調べたら、やっぱり昼行性のようです。
そうすると確かに、体温上昇や保護色説との辻褄は合います。
更に、我が家のニジイロクワガタが昼間から堂々と食事と交尾を繰り返している説明もつきました。
雑記は以上です。
ニジイロクワガタ
メタリックな緑色が特徴です。
なぜこんなにきれいなのか、普通の緑とこのピカピカの緑は何が違うのか。
そんなことを考えながら発色の仕組みについてダラダラ書いてみたのがこの雑記です。
*実物には赤や黄色も混じっていますがここではニジイロクワガタ=ピカピカ緑とします。
前提
光の波長と色
光には波長があります。人間は、光の波長が変わると色が変わったように認識します。波長の変化により認識できる色は以下の通りです。
例えば、紫色の光の波長は約380nm、赤色の光の波長は約780nmです。
380nm 〜 780nm
図1
さて、光の波長変化により現れる色はこれがすべてなのですが、この中に白色や黒色はありません。
白色とは
これらの波長(色)が異なる光すべてが均等に混ざった光が白色です。
日光は代表的な白色光です。太陽の色は白です。
ちなみに実際には、無限に近い数ある全て色を混合させなくても、代表的な色だけ混ぜれば、人間は白色と認識します。
黒色とは
白色とは逆に、どの光も含まれていないと黒と認識します。だから夜は暗いのです。
光の反射、吸収、透過
光が物体に当たった時、反射、吸収、透過します。どれかではなくすべてが同時に起きますが、割合は違います。鏡は反射成分が多い、ガラスは透過成分が多い、などです。
エネルギーは保存されるので、反射成分が多いほど、吸収や透過成分は少ないということになります。
この前提に立つと、なぜ物体に色があるのかがわかってきます。
本題
レモンが黄色に、リンゴが赤色に見える理由
白色光は図1の全ての色が混在しています。白色光が物体に入射すると、物性によって色ごとに反射、吸収、透過の仕方が異なります。
例えばレモンの場合だと、黄色の光は強く反射されて、他の光はあまり反射されず吸収されます。
これはレモンの皮を構成する物質の分子レベルの特性です。
人間の目は反射された光を捉えるので、レモンが黄色に見えます。
図2
同じように考えると、リンゴが赤く見える理由もわかります。
これで、少なくとも図1の中に存在する色が見える原理は説明できます。
全波長の光が含まれた白色光の中から、特定の波長の光が強く反射された時に、その波長に対応する色を人間は認識するのです。
では、ニジイロクワガタの色もこれと同じ原理で説明できるかというと、答えはNo.です。
図1にあのようなメタリックな色が含まれていないためです。
この疑問を考えるにあたり、同様の問題として金色の原理を考えます。
黄色と金色の違い
金色を持つ物体で代表的なのは、金属の金です。なぜ人間は金を金色と認識するのか。結論として、金色を特徴付けるキーワードは反射の強さです。
金に白色光が当たった時の反射光のイメージを図示します。
図2のレモンとの違いは、レモンよりも黄色の光を強く反射するという点です。
どうやら人間の目は、反射光が強い物体に対して光沢というものを感じるようです。
つまり、レモンと金は、他色の光よりも多く黄色の光を反射するという点では全く同じです。
色を波長のみで定義するとしたら、どちらも黄色と言えます。
しかしながら金はレモンよりもその反射率が高いので、同じ波長の光でも黄色ではなく金色に見えるのです。
黄色+光沢=金色、という考え方ができます。
同様に、赤茶色+光沢=銅色と言えますし、全色の光(白色光)を反射する物体は、白色+光沢=銀色となります。
同様に考えると、ニジイロクワガタの色も説明できます。
ニジイロクワガタの羽は緑色の光の反射率が高い
ニジイロクワガタに光が当たった際、以下のように緑色の光が反射します。更に、その反射率が高いことから人間は光沢を感じ、ピカピカ緑になります。
ニジイロクワガタの色=緑色+光沢
結論は出たのですが…ここからは何故ニジイロクワガタは光沢を持つことができるのかについても少し触れます。
補足
ニジイロクワガタの色は構造色である
金や銀のような金属光沢は金属元素が持つ自由電子が原因です。分子レベルの性質なので、金属元素以外の物質では金属光沢を持てません。
当然ニジイロクワガタの羽は金属でできていません。
その代わり、構造色という全く違った原理で金属光沢に近い光沢を発しています。
構造色とは透明な薄膜を重ねることで光を干渉させて発色する仕組みです。
光の干渉とは、複数の光が混ざったときに、特定の波長(色)の光が強まったり弱まったりする現象です。
干渉のイメージ図は下図の通り。
この図において「反射」と「反射①」の光が混ざります。
この時お互いに干渉し、特定の色の光が強め合い、その他の光は弱め合います。
どの色の光が強まるかは膜①の厚みで決まります。
ニジイロクワガタ場合は緑色の光が強まる厚みになっているものと考えられます。
ところでこの説明だと緑色に見える理由にはなっても、光沢が見える理由にはなりません。
ちょっと推測ですが、薄膜を何層にも重ねると、各層で少しずつ反射することで最終的に反射率が100%に近くなり、光沢が発生するのだと考えます。
ニジイロクワガタの羽は膜①、膜②、膜③…と等しい間隔、等しい厚みで何層にも重なっているのではないかと。
この構造により、ニジイロクワガタの羽は緑色で且つ金属のような光沢を得ていることがわかりました。
ニジイロクワガタがこんな色をしているメリット
最後に、なぜニジイロクワガタはこんな色をしているのか。その目的、メリットについてです。
体温上昇を防ぐ説
前述の通り、物体に当たった光は反射、吸収、透過します。
吸収された光は、そのまま無になるわけではなく、大抵は熱に変換されます。
また、反射が多いということは吸収は少ないということです。
つまり、反射が多い→吸収が少ない→体温上昇が少ない、という理屈です。
天敵に気付かれないため説
彼らが生息する環境でこの色は天敵に見つけられにくいという説があります。
これについては、何が天敵で、天敵の視覚がどんなものかを調べると、もっと説得力を持って説明できそうですが、そこまでしていません。
よって、はいそうですか気付かれにくいんですね、と納得するしかありません。
ニジイロクワガタは昼行性
そういえば、普通クワガタは夜行性です。夜はそもそも光がないから緑色光だけ反射する理由がないし、体温上昇だって心配する必要はありません。もしかしてニジイロクワガタって昼行性?と思って調べたら、やっぱり昼行性のようです。
そうすると確かに、体温上昇や保護色説との辻褄は合います。
更に、我が家のニジイロクワガタが昼間から堂々と食事と交尾を繰り返している説明もつきました。
雑記は以上です。
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